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インタビュー2024年1月19日

4年で4倍高!“買われる理由”とは クラウドで高成長 東証先取る先進経営 高千穂交易 井出尊信社長に聞く

近年のプライム市場で「一番の出世株」と言えば、エレクトロニクス商社の高千穂交易(2676・P)が挙げられよう。何せ2022年の年間上昇率42.0%、昨年65.9%で、今年も19日高値まで14.4%高となり、20年3月安値比では4.9倍高に達してきた。最高益更新中の好業績に、クラウドサービスを軸とした先行きの成長性、サブスクモデル伸長に伴う収益安定化、高い株主還元姿勢など評価の手掛かりには事欠かず、急騰を経てなお株価指標面にも割高感の感じられない同社に“死角”はないのか、井出尊信社長(写真)に今後の展開などを聞いた。

――現在の中期経営計画がスタートした22年4月頃から株高にも拍車が掛かった。この中計について聞きたい。

「来25年3月期に売上高260億円(前期233億6,000万円)、経常利益20億円(同15億8,800万円)などを目指すものだが、『モノ売りからコト売りへ』をテーマとしたクラウドサービス強化が“目玉”だ」

――クラウドサービスの具体的な内容は何か。

「主力は無線LANを設定から遠隔監視、保守サポートまで月額課金で請け負うMSPサービスで、アクセスポイント、スイッチ、セキュリティ機器、カメラなどとも組み合わせて管理できることが強みだ。当社は米シスコシステムズが買収する前の13年にメラキ社と代理店契約を結び、クラウド型無線LANの販売を開始している。昨年9月末の契約数は1万7,505で順調に拡大中。サブスクモデルで収入安定化、利益率改善につながっている。システムは同社製ながら、当社で全国300カ所、365日/24時間対応のサービス・サポート網を構築している。入退室管理システムや監視カメラシステムなど米ヴェルカダから導入したクラウドサービスも先行き期待できそうだ」

――最初の導入からすでに10年経つ。これから伸びるという根拠は。

「情報システム部門の人手不足に悩む中小企業は非常に多い。ここにきてはクラウドサービスへの抵抗感が薄れてきたようだ」

――「抵抗感」とは。

「自分の資産である情報をネットワークに出すということだ。全てを自社で管理するよりもコア事業に集中してアウトソーシングを活用しようという機運が強まり、従来では考えられなかった金融系などでも一部クラウドを取り入れ始めている」

――売上比率などは。

「クラウドと保守メンテナンスを合わせて現在10%程度だ。前期の営業利益構成比は約36%となったが、中計では44%を掲げ、ゆくゆくは5割に高めていきたい」

――足元の収益好調も「クラウド効果大」ということになりそうだ。

「ここ数年の業績ではデバイスセグメントの半導体事業の貢献度が高い」

――半導体事業の好調の理由は。

「好調の要因は2つある。1つは、半導体不足のなかでも仕入れ先との関係強化により調達がしっかりできたこと。もう1つは、新規代理店契約の獲得による。前代理店から移管した取引があることや、提案できる商材が増えたことで新規顧客の開拓も進み、売上増につながった」

――中計では「配当性向100%」も掲げている。

「『3期平均ROE(自己資本利益率)が8%を超過するまで』という方針から、想定を上回る収益改善となっても最短で25年3月期までは配当性向100%で還元する。その後は未定だが、配当額を維持できるような成長を目指している」

――株主還元は重要だが、投資も必要では。

「決して還元ありきではない。売上高や利益などのPL(損益計算書)面ばかりに目を向けた経営を改め、資本効率性をいかに高めるかというBS(貸借対照表)の発想を取り入れた。稼いだお金はいったん全て還元する一方、中計では30億円の戦略投資枠も設定した。内部留保や負債の活用も検討して、クラウド事業の成長加速に向けたM&Aなども進めていく」

――東証が問題提起する前から資本効率改善に取り組んできたわけだ。

「株主の方にも評価して頂いている。昨年からはIR専門人材を配置するなど市場とも積極的に向き合っていく。20日には東京ビッグサイトでIRセミナーの開催も予定している」(K)