銘柄選別の新たな切り口に
株式投資を行う際の補助的ツールとして、生成AIを活用する個人投資家が増えている。AI時代の情報発信で企業側が心掛けるべきことは何なのか。そして投資家が注目すべき、AIに選ばれやすい企業の共通点とは――。
IR・株分析支援などを行うスタートアップ、シュタインズ(東京都中央区)はこのほど、上場企業約3,700社のIR(投資家向け広報)サイトを対象にスコアリングを実施した。その結果、時価総額が大きいほどスコアが高い傾向があるものの、時価総額30億円以下でも高スコアを獲得している企業が存在することが分かった。
本調査の詳細については、次週以降、本紙2面にて新連載「AIが考えるスゴイIR」を開始する。これに先立ち、今回の取り組みに至った経緯や狙いについて、シュタインズ代表・齊藤大将氏に話を聞いた。
――企画の背景について。
生成AIが参照する企業情報の量や情報源には、銘柄ごとにかなり差があると感じていた。企業がIRサイトでどのように情報発信しているかによって、AIが学習・参照する情報にも偏りが生じる可能性がある。
個人投資家の勉強会などで他の投資家と交流する中でも、銘柄探しや企業分析に生成AIを活用することは、すでに珍しいことではなくなってきている。だからこそ、企業側のIR発信も「AIにどう理解されるか」という視点を持つ必要があるのではないかと考えた。
――AI・データ活用を得意とする御社ならではの取り組みだ。
上場企業約3,700社のIRページを対象に、なるべく定量的に評価することを目指した。生成AIは本来、IR情報も取得し、それらを統合して回答を生成する。しかし、今回は企業のIR改善に役立てることを重視し、あえて各社の公式IRページに対象を絞った。
証券会社や各種団体が行っている「IR優良企業」の選定に対して、いわばAI部門のような位置づけにしたいという思いもあった。従来の評価では、どうしても知名度の高い企業や時価総額の大きい企業が注目されやすい面がある。AIを活用すれば、よりフラットに多くの企業を比較し、まだ十分に知られていない優れたIR発信を見つけることができる。
――評価にあたって重視した点は。
単にサイトのデザインや構造が整っているかだけではなく、投資家視点で必要な情報が得られるかどうかを重視した。例えば、事業内容、成長戦略、業績推移、株主還元、リスク情報、経営者メッセージなどが投資家にとって理解しやすい形で整理されているか。そのため、見た目がきれいなサイトであっても、情報量が少なかったり、内容が抽象的だったりする場合は評価が高くなりにくい仕組みにしている。
――手応えはどうか。
今回の分析では、プライム市場の企業や時価総額の大きい企業ほど全体としてスコアが高い傾向が見られた。これはIR体制や情報発信に投資できるリソースの差が影響している可能性がある。
一方で、特に良かったのは、時価総額100億円未満の企業の中にも、IR発信に力を入れている企業を見つけられたことだ。また、AIによる評価は単に順位を付けるだけではなく、どの点が評価され、どこに改善余地があるのかを具体的にフィードバックできるのも特徴。企業にとっては自社のIRページが投資家やAIからどう見られているのかを知るきっかけになり、個人投資家にとっても、企業の情報発信を比較する新しい視点となるだろう。
――最後に一言。
今後は評価基準やプログラムの精度をさらに高めながら、より多くの企業のIR発信を可視化していきたい。
生成AIの活用が投資家に広がる中で、企業は「人に読まれるIR」だけでなく、「AI(コンピューター)にも正しく理解されるIR」へと進化していく必要がある。IR情報がより分かりやすく、活用しやすい形で提供されるようになれば、個人投資家も投資判断に必要な情報へアクセスしやすくなる。その結果、投資環境の整備につながるだけでなく、より多くの人が投資に関心を持ち、学びやすくなるという意味で、金融教育の面でも意義があると考えている。(SS)
〈株式会社シュタインズ〉テクノロジー×教育の研究開発をテーマに活動するスタートアップ。創業当初はVR美術館やVR教育など、メタバースを活用した文化・教育分野の取り組みに注力。現在は軸足を「金融」に移し、データサイエンスやAIを活用したIR・株分析支援をはじめ、金融学習アプリ、予測市場サービスなども手掛ける。
※速報版は最終的な校了前の紙面記事です。今後、修正等が入る場合があります。


