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インタビュー2026年8月31日

第一実業(8059・東証プライム)



よくわかる!! 第一実業(8059)
~ Ishareアナリストが船渡社長に聞く14の質問 ~

【会社名】第一実業(8059・東証プライム)
【実施日】2026/07/15
【回答者】代表取締役 社長執行役員 船渡 雄司 氏

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▶本テキストは Ishare が実施した第一実業の船渡雄司社長へのインタビューの内容を書き起こしたものです。
▶船渡社長には、多くの投資家が抱く「14の質問」にお答えいただきました。

【第一実業・会社概要】
1948年創業のエンジニアリング商社。射出成形機を含む産業機械から、各種プラント用設備、リチウムイオン電池製造装置、半導体・実装関連まで幅広い生産設備を取り扱う。単なる機器販売にとどまらず、複数メーカーの設備を束ねるラインエンジニアリングから導入後の保全・生産性向上支援までを一貫提供する「次世代型エンジニアリング商社」を標榜。26/3期実績は、売上高が約2,200億円、営業利益が約140億円だった。7事業セグメントで、海外売上比率50%超とグローバルに事業を展開する。

Q1
一見すると一般的な機械商社に見えますが、商材や付加価値の出し方も多様にあると思います。御社をあえて一言で表すと、どのような会社でしょうか。

出所:第一実業統合報告書2025

一言でいえば、「ものづくり・生産設備の分野で、エンジニアリング機能を併せ持つソリューションプロバイダー」です。単なる商社ではなく、エンジニアリング機能を自社で持ち、ものづくりの課題解決を提供する企業だとご理解ください。

Q2
具体的には、第一実業(8059)のソリューションプロバイダーとしてのビジネスの動き方はどういったものになるのでしょうか。

出所:第一実業統合報告書2025

お客様が製品をつくる際には、上流から下流まで様々な工程があります。当社は工程ごとに最適な設備・プロセス機器をお客様とともに選定・納入するところから始まり、お客様が決めたあらゆる設備を、生産が立ち上がるまで当社のエンジニアがメーカーと協力しながらラインとしてまとめ上げていきます。メーカー1社ではできない、5社とか10社とか、多数のメーカー製の設備をまとめたラインエンジニアリングを担うわけです。さらに「生産性を上げたい」「品質を上げたい」といったお客様の目標に対してソリューションを提供しながら生産ラインを立ち上げ、最終的に製品が完成するところまで伴走できる点が当社の付加価値です。

Q3
単品売りではなくトータルパッケージで提供するビジネスは、売上ベースでどの程度の比率を占めるのでしょうか。

複数メーカーのトータルコーディネイトに加えて、設備単体でもお客様と共同開発したり、カスタマイズしたりして納めるケースがあります。標準品をそのまま右から左へ流す取引はほぼありません。カスタマイズ品・共同開発品まで含めれば、約2,000億円の売上のほとんどが、何らかの付加価値を乗せたものです。これは国内・海外(26/3期の海外売上比率52.8%)に分けても同様です。

Q4
昔から現在の姿だったわけではないと思いますが、どのような契機を経て付加価値化が進み、現在の相対的に高い営業利益率につながったのでしょうか。

出所:第一実業統合報告書2025

当社の創業は戦後間もない1948年で、石油の精製・掘削といったプラント関係のパーツやユニットの輸入販売、米国メーカーの代理店業が中心でした。

その後、高度経済成長期が到来し、射出成形機は持ってくれば飛ぶように売れました。メイン商材を右から左へ売るだけでよい時代でした。

転機は、お客様がコストダウンのためグローバルに工場を出し始めたことです。お客様には現地でサプライヤーを探すノウハウがなく、中小メーカーも海外へ物を運べません。そこで当社が国内メーカーの製品をまとめて海外工場へ運び、現地で立ち上げる。これを長期的に続けてきました。さらに中国・欧州・アジアへの展開が進むと物流・通関が簡単ではなくなり、失敗も経ながらロジスティクス機能が鍛えられました。同時に、お客様の進出先に合わせて拠点を広げ、グローバルネットワークを構築していきました。

こうした機能が積み上がり、日系だけでなく非日系のお客様に対して、現地の外国籍社員によるサポート力を進化させてきたのが現在の第一実業です。

Q5
ソリューション提案には高度な人材が不可欠だと思います。人的資本の面で、御社の高付加価値を成り立たせている背景は何でしょうか。

出所:26/3決算説明資料(5月22日)

4つのコア(現場力・技術力・ロジスティクス機能・グローバルネットワーク)を支えているのは、すべて人材です。26年3月末時点で、グローバルで461名のエンジニアを擁するまでになりましたが、事業部門のメンバーも、現場力、技術知識、ロジスティクスの知識、グローバルネットワークの活用をマルチタスクで回せる人材が中心です。お客様の要望自体が複合的なので、「私はこれしかできません」では務まりません。OJTや社内教育など仕組みの整備はもちろんですが、根底にあるのは、若手も中堅もかなりの自由裁量のなかで「お客様の望むものを取りまとめていく」ことに強い興味を持つ人材が多いことです。これが当社の強みだと思っています。

Q6
組織構造としては、アカウント(顧客企業)単位の担当制ですか、それとも機能単位ですか。

出所:第一実業統合報告書2025

現在の事業軸体制(7事業)にしたのが2015年頃、それ以前は地域軸で、エリアごとに根を張ってアカウントを担当していました。事業軸化してからは、その事業をグローバルに展開する形になり、縦軸(事業)と横軸(エリア)が一緒に動いて約10年です。事業部によってアカウントで動く人も、事業軸で全体を見る人もいて、海外拠点との人材ローテーションも活発です。事業軸とエリア軸が混ざることで人が大きく成長します。巻き込むプレイヤーが多いぶん、サプライヤーの目利き力、技術提案力、まとめ上げるエンジニアリング力が必然的に備わり、より高いレベルの仕事にチャレンジできるようになる好循環があります。

Q7
機械商社は各社「トータルソリューション」を標榜しており、外からは違いが分かりにくい面があります。御社が選ばれる理由はどこにあるのでしょうか。

他の機械商社と比べ、エンジニアリング機能こそが第一実業の最大の付加価値であり、明確な違いです。確かにメーカーも同業他社も「トータルソリューション」と言いますが、具体性に乏しいことが多いように思います。

当社のエンジニアリング機能が付加価値を持つ背景にはお客様側の構造変化があります。お客様の工場は国内外にどんどん増え、かつては海外2拠点だったものが40拠点になるようなグローバル展開が進む中で、ラインエンジニアリングを担える生産技術・生産準備の人材が不足しています。日本国内に現場が減ったことで技術系人材が育ちにくく、むしろ海外現地スタッフの方が成長するという逆転現象すら起きています。その代替として、外部のエンジニアリング機能が必要とされており、当社が重宝される最大の理由はそこです。「トータルソリューション」という言葉より、「どこであってもものづくりが立ち上がる状態にして、お客様にお渡しできる」体制を持っていることが一番の強みです。

さらに付け加えると、生産ラインを立ち上げた後の支援があります。「1時間100個のラインを品質そのままで120個にしたい」「歩留まりを上げたい」といった要望に対する生産性向上・品質向上の活動支援を、特にエレクトロニクス分野で提供しています。また、EPC(設計・調達・建設)を担えるエンジニアリング会社はたくさんありますが、当社はEPCM(設計・調達・建設・マネジメント)の「M」、つまり導入後のメンテナンス・保全に加えて生産性向上支援まで踏み込んでおり、ここは差別化の最先端だと思っています。競合他社では顧客工場の部署ごとに一つずつ製品を提案して採用される形が一般的ですが、当社は生産工程の一定の範囲を一括で請け負うまで噛んでおり、実際に工場の稼働をご覧いただければ、その違いを実感していただけると思います。

Q8
2025年5月公表の中期経営計画「MT2027」では、7事業を基盤領域と注力領域に分けていますが、今後5〜10年の事業ポートフォリオの考え方を教えてください。

出所:26/3決算説明資料(5月22日)

基本は市場に沿った経営資源の配分です。政府が掲げる重点17分野、AI半導体・データセンター・蓄電池・サーバー関連、GXといった分野にリソースを投入していくのは、当社に限らずどの企業も同じでしょう。

当社の特徴は、複数の事業がひとつの市場に関わる点です。例えばデータセンター市場では、必要となる設備や技術は多岐にわたります。電源設備やエネルギー供給、排熱を再利用する仕組みにはプラント・エネルギー事業やエナジーソリューションズ事業が関わります。サーバーや基板まわりではエレクトロニクス事業が貢献できます。さらに、安定稼働に欠かせない冷却システムでは産業機械事業の技術など4つの事業が関わります。これをバーチャル組織(事業部横断の仮想的なチーム)として束ね、データセンターという市場でそれぞれが強みを発揮します。したがって「どの事業が良い・悪い」という単純な選別にはなりません。

もちろん、成長のためには資本効率の悪い事業を休止・撤退する判断は随時出てきます。ただ、商社が事業ポートフォリオを目先の市場に全部合わせて最適化するのは、実は大きなリスクでもあり、5年・10年先の「次の種」となる事業は、当面は収益性が見えにくくても継続して育てます。活況な市場への資源配分を王道としつつ、まだ成熟していない市場にも人を充て、将来を見据えた投資を続けるバランスは今後も変わりません。

出所:26/3決算説明資料(5月22日)

出所:26/3決算説明資料(5月22日)

Q9
中長期での最適化を前提にすると、種まき領域を抱えながらも中期経営計画通りROE10%以上を維持するという考え方になるかと思いますが、実績を見ると好調な年は11%台後半まで出ています。実質的には定常的に10%超を狙う目標と解釈していますが、あえて目標を「10%」と置いている背景や、今後この水準をどこまで引き上げていきたいのか、お聞かせください。

出所:中期経営計画「MT2027」の策定について(2025年5月9日)

ROEなど資本効率にはPBR、ROICなど様々なファクターが絡み、まさにB/Sの世界です。株主総会でも申し上げましたが、当社の健全なバランスシートを前提に、対外的には「10%以上」としつつ、社内的に目指すのは11〜12%だと考えています。

出所:26/3決算説明資料(2026年5月22日)

Q10
ネットキャッシュ約467億円、自己資本比率50%超という健全なバランスシートを、今後の成長にどう活かしますか。

出所:26/3決算説明資料(2026年5月22日)

当社が資本効率を上げる施策として、①収益力そのものの向上(フロー・ストック両面)、②資産効率の改善、③株主優待や自己株買いを含む適切な資本政策、この3つをバランスよく進める考えがベースにあります。

そのうえで、キャッシュアロケーションの考え方として、成長投資に150億円を設定しています。使い道の第一は、成長領域への「骨太投資」で、航空・インフラやヘルスケア事業本部が対象です。第二に、成長領域で足りないピースを埋める投資、そして第三に、新たにグループシナジーへの投資を考えています。具体的には、グループにはメーカー、エンジニアリング専業の子会社などがあり、そのシナジー創出する投資を考えています。

具体的には、現在、グループ会社の第一メカテックの社屋がある埼玉県川口市の拠点に、第一実業グループとしての新しいテクニカルセンターを作る計画です。新技術のデモ、セミナーに加え、AI・自動化、フィジカルAIなどデジタル関連を融合的に提供する場にしていきます。

正直に言えば、昨年度は投資をやりきれなかった反省があります。今年度は仕掛かり中の案件も出てきますし、その際にはネットキャッシュをどれだけ使い、どの程度銀行借入を組み合わせるかも考えます。借入はできれば抑えたい一方で、成長投資のために必要な局面では、資本効率と財務健全性のバランスを見ながら活用していきます。

Q11
テクニカルセンターは中長期的にどこへ効いてくるのでしょうか。

主に3つあります。第一に、国内トップクラスの技術や、海外のニッチ分野で高い競争力を持つ製品・デモ機を集め、既存のお客様に常に新しい技術を紹介できる拠点にすること。第二に、省人化・省力化という日本と世界共通の課題に対し、ヒューマノイドロボットのようなソフト・ハード最先端のソリューションを提供する「課題解決の拠点」になること。第三に、デモを見て終わるだけの場ではなく、常に人が行き交うネットワーキングの場にすることです。結果として新規顧客の開拓、新商材の開発、そのグローバル展開につながり、売上と事業の付加価値に結び付くと読んでいます。第一実業がオーナーとなって主導し、常に新しいものが実装される「ワクワクする技術情報拠点」にしたいと考えています。

Q12
M&Aについてはどう考えていますか。

「成長戦略『V2030』で掲げる売上高の目標である3,000億円にしたいから買う」といったような売上を単純に積み増すためのM&Aをするつもりはなく、基本はシナジーです。ものづくり領域で当社にないピース、例えばSIer機能の獲得です。あるいは、AIを組み込んだ生産管理・監視機能により、設備が壊れる前の予防保全・予知保全を提供し、ストック型収益モデルを作るための投資です。このように、いま手掛けている事業をさらに伸ばす成長投資を最優先します。

Q13
機関投資家との1on1ミーティングから得ている気づきはありますか。

ひとつは、7つの事業本部があって「中身がよく分からない」という投資家が相当おられることです。「どんな会社なのか」の説明には常に苦労しており、成長戦略・投資の具体的な部分も含めてきちんと説明していかなければと感じています。

また、時価総額が1,000億円を超えてきて、この1年ほどで機関投資家からの面談要請は増えています。これまで接点のなかった機関投資家からもコンタクトがあり、「まず会社について教えてほしい」「なぜこれほど業績が安定しているのか」と聞かれます。1,000億円を超える時価総額帯の類似企業と比較して現状控えめなPERがついているため、海外を含む機関投資家向けIR活動を強化している最中です。

Q14
最後に、10年後の第一実業は投資家からどのような会社として認識されていたいですか。

出所:22/3決算説明資料(2022年5月22日)

2036年、世の中は大きく変わっていると考えます。AIの浸透、現場で働く人の不足といった変化のなか、当社はいま「工場の中のものづくり」を支えていますが、10年後は、データセンターで既に仕掛けているように、産業インフラそのものを支える「技術ソリューション企業」に変わっていくと考えています。データセンターを例にとれば、「施設があり、中身があり、パワーサプライがあり、それを支える冷却システムがある」といったように、モノづくりを支えているる設備や技術システムが、今後は社会に欠かせないインフラとしての重要性を高めていくと見ています。当社はそれを丸ごと支える企業を目指します。

同時に、あらゆる設備が24時間365日動き続けるためのサービス・保守がより高度化し、ストック型ビジネスが収益のおそらく3〜4割を占めるようになるでしょう。エリア的にはASEAN・インドを中心とするアジア経済圏は10年後も成長の中心であり続け、アフリカなどでのビジネスも拡大していきます。M&Aもそれを見据え、技術・人材・顧客基盤を手の内に入れていきます。

GX、DXになぞらえて、今朝考えた言葉が「BX」、つまりビジネストランスフォーメーションです。ビジネスモデル自体が10年で大きく変わる中で、当社のコアを強化し続ければ、工場の設備・ラインの世界にとどまらず、工場の周りの社会インフラ・産業インフラまで入っていかざるを得なくなります。例えば電力なら、送電線に依存しない分散型で、温泉熱など低温の熱源でも発電できるバイナリー発電のようにどこでもサステナブルに電気を起こす仕組みも既に手掛けています。産業インフラを丸ごと担う会社に変わっていく、ここの変化はぜひご期待ください、と申し上げたいと思います。

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