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インタビュー2021年9月2日

IPOセカンダリー研究 HRテック業界の「風雲児」 プラスアルファ・コンサルティング 三室 克哉代表取締役社長に聞く

6月30日に新規上場したプラスアルファ・コンサルティング(4071・東マ)は、企業に寄せられる消費者の声を“見える化”するサービスや、人事情報を統合し、分析するプラットフォームの開発・提供を手掛けている。上場の狙いや今後の事業戦略について、代表取締役社長の三室克哉氏(写真)に聞いた。

――ビッグデータを活用して企業の業務効率化を支援しているとのことだが、事業内容をもう少し詳しく教えてほしい。

事業の柱は「見える化エンジン」「カスタマーリングス」「タレントパレット」の3つ。祖業である「見える化エンジン」は、コールセンターやアンケート調査などで企業に寄せられた消費者の声を可視化するサービス。数値ではなく文字として集まる膨大な量の情報を仕分けして、「読む」ではなく「見る」だけで状況が把握できるようにした。商品の改良や開発などに利用されている。

「カスタマーリングス」は、消費者が訪れたウェブサイト上での行動から興味・関心などを判断、メールやSNS(交流サイト)など何かしらアクションを起こして優良顧客へと育成するサービスで、通販やEC(電子商取引)運営企業向けに展開している。そして「タレントパレット」は、社員のスキルや評価といった情報を一元管理して、組織の力を最大化させるためのシステムだ。

――タレントパレットはサービス開始から5年と業界内で後発ながら、600を超える企業の導入実績がある。

今2021年9月期は売上高の約半分をタレントパレットが占める見通し。実は会社を上場させる考えはなかったのだが、働き方改革などの潮流に乗ってタレントパレットが大きく伸びてきたので、これをさらに強化・拡大するために路線変更した。

――誕生には三室社長の経験が生かされたと聞く。

見える化エンジンとカスタマーリングスはシンクタンク勤務当時から感じていた課題をベースに立ち上げたサービス。その後、起業した当初は全社員に目が行き届いて、こんな仕事がしたい!といった心情まで把握できていたのだが、社員が増えるにつれてフォローができなくなった。その一方で、カスタマーリングスというデータ分析を強みにしたマーケティング支援事業を手掛けており、顧客の見える化を行ってきたノウハウから、社員の見える化として、人事の世界に応用しようとカタチにしたのがタレントパレットだ。

――HR領域の競合サービスは多い。違いは?

マーケティングの要素を持っていることだ。いまだに紙やExcelベースの評価シートや自己申告書が多い人事業務の効率化と、顔写真やスキルを並べて社員を管理するサービスはほかにもあるが、タレントパレットでは“人材のマーケティング”、つまり、一人一人の活躍の場を広げるべく「人事異動シミュレーション」まで可能にした。ある会社では経営会議の場でタレントパレットの画面を大きく映し、「こんなスキルと実績があるから部長に推薦しよう、メンバーにはこの人を追加してみよう」といった判断に、その場で同意を得ることを可能にしている。

数万人の社員を抱えるホールディングスでも、グループ会社がタレントパレットを導入することによって、会社ごとに閉じられて中身が見えなかった人事情報を管理することができる。経営サイドは、傘下企業のどこに・どのような人材が配置されている、あるいは活用されずに埋もれているのかが一目で分かり、社員サイドも、普段の頑張りが即座に反映される上に、将来やりたい業務といったことまで共有されているため希望が通りやすくなる。ちなみに「社員の希望まで網羅」の実現には、評価やアンケートにより集められる社員の声、テキストデータの分析に祖業の「見える化エンジン」のテキストマイニング技術が活かされている。

――第3四半期は営業利益の通期計画に対する進捗率82%と、足元では好調が確認されている。今後はどうか?

タレントパレットの顧客数は6月末時点で623件と、昨年6月末の383件から急増しており、この傾向はまだまだ続く。加えて昨今は働き方の多様化や健康経営への対応など人事・総務部の対応領域は拡大するばかり。これをカバーするため当社では機能追加を積極的に行っていく。次の一手も模索中だ。営業支援や教育支援などタレントパレットを応用できる領域をイメージしている。