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IPO2023年5月1日

IPO社長会見 エキサイトHD 両利きの経営で成長図る

エキサイトHD(5571)が4月19日、スタンダード市場に再上場した。米インターネット企業エキサイトの日本法人を伊藤忠商事(8001・P)が買収し、旧JASDAQに上場していた。2016年3月期から3期連続赤字で、18年に西條晋一代表取締役社長=写真=が率いるXTechがTOB(株式公開買い付け)を行い、上場廃止となっていた。初値は公開価格を26.8%上回る1,700円。上場当日の会見で、西條社長が語った内容のポイントは次の通り。

“黒字にできないわけがない”……私は伊藤忠商事からサイバーエージェントに転職して、約12年間在籍した。その間、新規事業のメディア、ゲーム、金融事業を立ち上げてきた。伊藤忠からTOBの相談があったとき、ネットの上場会社での経験があり、ベンチャーキャピタリストでもあったので公表資料を徹底的に見て「これが黒字にできないわけがない」という直感がまず働いた。もう1つ従業員の40%がエンジニアということも非常に魅力に感じた。80人のエンジニアを雇おうとすると膨大な資金と時間がかかる。われわれは投資ファンドのように、上場時に売り出すことは一切していない。短期的なキャピタルゲインを狙いにいくより、中長期で伸ばしていくスタンス。そのあたり、通常のIPO案件と少し違う。

稼ぎ頭はカウンセリングサービス……エキサイトはもともとポータルサイトで、その資産として(プラットフォーム事業に)メディアサービスが残っている。特にウーマンエキサイトという女性系メディアを伸ばし、月刊2,000万PVから直近は2億6,000万PVまで伸ばした。ユーザーが集まってくるのでその他のサービスを提供しようと、カウンセリングサービスとD2Cサービスも提供している。稼ぎ頭はカウンセリングサービスの電話占いとお悩み相談室。新規事業のD2CサービスではEMININAL(エミニナル)というマウスピースの歯科矯正の調子がいい。ネットマーケティングで地方のユーザーを歯科に送客し、手数料を得るビジネス。

経営ノウハウをSaaSで提供……ブロードバンド事業についても伸びている。他の大手がテレビCMなどを打つなか、ネットでの集客に集中して、コストを抑える。それもあって、契約期間の縛りがないため、情報感度の高いユーザーの支持を得ている。新規セグメントのSaaS・DX事業だが、18年にエキサイトをTOBしたあと経営陣を刷新し、コストカットや組織改革で、赤字状態からわずか4カ月で単月黒字にした。この経営管理(のノウハウ)をソフトウェアとして開発し、SaaSで提供している。そのほか、マーケティング領域のSaaS、企業のDXコンサルティングなども行っている。

新規事業のアイデアは尽きない……グループの強みは4つある。1つは経営資源。女性ユーザーがたくさんおり、さらに力を入れていきたい。それから技術力。安定感のあるエンジニアが従業員の4割もいる。次にビジネス力。利益を生み出す事業を有しており、さらに再投資に回していける。それから経営力。私も11年ぶりに上場企業の経営に復帰したが、小さな会社から時価総額1,000億円まで持っていく苦しいフェーズを経験しており、今日の時価総額は80億円ぐらいだが、これを成長させていく自信をもって経営ができる。最後に事業創造力。新規事業5つのうち既に2つ黒字化しており、新規事業のアイデアは尽きないが、その中から厳選したアイデアを実際にやっていく。

ニッチなところでSaaSを柱に……成長戦略は既存事業の深堀と新規事業の開拓を行う「両利きの経営」をキーワードにしている。ブロードバンド事業は割と緩やかに成長している。プラットフォーム事業については足元は力強く伸びているので、短中期を牽引するものにしたい。それからSaaS・DX事業を次の柱としていく。既に大きなSaaS企業がたくさんあるので、正面で戦うのではなくニッチなところから入っていきたい。例えば経営企画のSaaSは、まだあまりない。ニッチでシェアをとって横へ広げていく。またシナジーのある事業があれば積極的にM&Aをしていきたい。(HS)

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