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IPO2023年12月22日

IPO社長会見 ナイル 売上成長と利益創出を達成しながら新たなDX事業も創出

ナイル(5618)が12月20日、グロースに新規上場した。自動車産業DX(デジタルトランスフォーメーション)事業と、ホリゾンタルDX事業を展開。初値は公開価格を8.3%下回る1,540円だった。上場当日の記者会見で高橋飛翔代表取締役=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

損失額は急速に減少……大学在学中の2007年に創業。一貫して「DX」をテーマに事業を展開してきた。現在は自動車産業DXと、ホリゾンタルDXの2つを展開。自動車産業DX事業は、オンライン完結で完全月額定額制で一般消費者向けにマイカーを提供する、クルマのサブスクリプションサービス。ホリゾンタルDXは顧客企業のDXやマーケティングの課題解決を支援するコンサルティングが中心。売上高は右肩上がりで16年連続増収。事業別では車のDXは売上高平均成長率164%と急成長、ホリゾンタルも25%と堅調に成長している。一方、先行投資が重なり21年に18億6,000万円の営業損失を計上した。その後は車のDX事業の売り上げ成長による赤字縮減と、ホリゾンタルDXの収益性強化が相まって損失額が急速に減っている。

車のDX事業で新市場創出……新車はディーラー網といわれる店舗で売られているが、私たちはデジタル化が進展する中、別のアプローチがあると考え、完全無店舗かつ非対面で車を販売している。日系の全メーカーの全車種、全グレードを新車も中古も取りそろえることで、一つのウェブサイトの中で利便性高く車を探すことができる。また、最大11年までのリース契約を作るなどして非常に安い月額で乗っていただけるようにしている。この事業の社会的会的意義は、非常に煩雑な車の購買の手間暇をデジタル化し省力化している点にある。また、年間で200万人と言われている車のローンやリースの審査に通らない方々が自動車金融商品を利用できるようにサービスを推進している金融包摂的観点の2つ。これらにより新車、中古車の販売市場において新しい市場を創出していると自負している。

アセットライトなビジネスモデル……車のサブスクリプション契約期間中の在庫を持たない点もユニーク。提携金融事業者と顧客の間の車のサブスク契約を仲介するポジショニングをとりながら、アセットライトにビジネスを作り上げ、かつ、ディーラー、陸送会社など様々なステークホルダーとの業務のやり取りをデジタル化し自動化し効率化することで一般消費者にオンライン完結で車の金融商品を提供するという独自のビジネスモデルを作り上げている。収益は契約締結時に提携金融事業者から得る報酬と、月額でお客さまから得る報酬フィー。このためキャッシュフローは非常に良好。また、カスタマーチャーンレート(顧客解約率)は0.2%と低水準で安定。契約をとればとるほど月額収益が積み上がっていき、安定的に黒字化が近づいている。

ホリゾンタルDXの特徴……ホリゾンタルDXはインターネットを通じて売り上げや利益を高めたい、あるいは組織の生産性を高めたい企業に対し、コンサルティング支援を中心に包括的に支援している。様々なDX事業者がいる中、私たちは車のDX事業をしているが故にお客さまの売り上げや利益を高められるのかというテーマに対し、ともに作戦を考えることができる。この強みに加え、様々なソリューションを組み合わせて個社ごとに提供していくことで模倣困難性の高いソリューションを提供できている。顧客継続率は非常に高く、顧客単価も提供ソリューションの拡大に伴い増加し続けている。受注額は今12月期は第3四半期累計で前年同期比60%増と非常に好調。新規の問い合わせリード数も同22%増加しており、多くの引き合いがある中で効率の良い案件に絞って営業できている。

商談は安定的に創出される構造……私たちはウェブサイトやユーチューブでマーケティングノウハウを発信している。これを見た企業の担当者や責任者が問い合わせしたり、メルマガ登録、資料請求することで顧客候補のデータベースが積み上がっていく構造。このデータベースに対して機動的に商談をしかけていくことで商談が安定的に創出され、受注に転換されていく構造にある。

目指す姿……大きく2つの戦略を持っている。一つがホリゾンタルなDX支援を突き詰めて様々な産業、事業者の課題をより幅広く解決していくこと。その中で見つけたDX余地のある産業についてバーティカルにDX事業を作って深堀りしていくことを考えている。こうしたバーティカルなDX事業を増やしていくことでより日本のDXの前進に貢献したい。車のDX事業については、車の申し込みをされた方が100人いらっしゃるとしたら数十人が審査に落ちてしまうことが当社においてもある。こうした与信の弱い人、ローン審査に通ったとしてもより安いものが欲しいという人もあり、そうした方々のニーズに合う車のサブスク商品などラインアップを充実させていくアプローチにより、広告投資あたりの契約獲得効率を上げて、車を持てる人をより増やしていくことを考えている。私たちが相手にしている市場は、車のDXとホリゾンタルDXだけで10兆円強。まずはここでしっかりと売り上げ成長と利益創出を達成していきながら、中長期においてはバーティカルなDX事業を増やすことを見据えていきたい。(Q)

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