MabGenesis(653A)が11月2日、東証グロースに新規上場した。初値は公開価格を8.07%下回る830円。同社は国内初のペット用(イヌ・ネコ用)抗体医薬品にフォーカスした創薬企業。開発した抗体を製薬にライセンスアウトすることで収益化している。上場当日の記者会見で新庄勝浩代表取締役=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
ビジネスモデル
共同研究型と自社研究型の2つ。共同研究型は共同研究契約の契約一時金と、研究の進捗に伴う研究マイルストーンを得る。いずれのモデルでも有望な抗体を取得できたところで製薬企業にライセンスアウトする。その後は製薬企業が主導権を持って臨床開発と承認申請、製造販売を行う契約を締結。その進捗に伴い開発マイルストーンを頂戴し、製造販売後については販売マイルストーンと販売ロイヤリティを頂戴するモデル。
成功確率は高い
抗体薬は人体向けで40年の歴史があり、220種類以上が製造販売されている。人もイヌもネコも同じ哺乳類のため慢性疾患のメカニズムは共通する。このため人で成功したメカニズムをそのままイヌ・ネコに応用して創薬している。これにより有効性と安全性が担保された状況で研究開発でき、ペット用抗体薬は人体用に比べ高い成功確率が予想される。
ブルーオーシャン
イヌ・ネコ用抗体薬の歴史は10年と人体用に比べ浅く、製品数も現在世界で8製品のみ発売されている。ペットの家族化とそれに伴う長寿化により慢性疾患が増えているため、抗体薬で対応すべき慢性疾患は多く、未開拓のブルーオーシャンといえる。ペット用抗体薬市場は2024年の約1,700億円から34年には約9,000億円を超え、年成長率18.1%が見込まれている。例えば錠剤は1日1回経口投与するが、嫌がるイヌ、ネコもいるので結構大変。その点、抗体薬は動物病院に連れて行き一回投与(注射)すると4週間程度、効果が継続する。これがペットや飼い主にとって利点。
強み
大きく3つの強みがある。まず抗体技術。ファージディスプレイという遺伝子組み換え技術を駆使した抗体取得技術などを用いて再現する抗体ライブラリーの品質は世界一と自負。これを利用し安全性、有効性、品質に優れた完全イヌ型・完全ネコ型の抗体を持つ。2つ目は顧客基盤。MSDアニマルヘルス(世界売上高2位)、フランスのセバ(5位)、フランスのビルバック(6位)と世界的大手がパートナーになっている。日本では国内トップの共立製薬のほか、日本曹達とプロジェクトを進めている。
年10~20件のマイルストーン達成の公算
強みの3つ目は豊富なパイプラインで現在19本。うち7本が前臨床段階にあり、うち4本が製薬会社に導出済み。動物薬では前臨床段階はヒトのフェーズ1.2に相当する。イヌ・ネコの場合、イヌ・ネコを用いて臨床試験の前に薬効や安全性を試験し確認できるため。また、探索研究段階は現在12本。うち10本が製薬会社と共同研究契約を締結済み。対象疾患は慢性腸疾患など慢性疾患と皮膚疾患等が中心。ネコでは特有の慢性腎疾患が命を落とす大きな原因となっているため、これも共同研究を進めている。守秘義務のためマイルストーンの内容は言えないが、19本のパイプライン中、契約済みは14本。ここから年10~20件のマイルストーンが次々に出てくるような計画になっていることがわれわれのポートフォリオの利点。
中長期ビジョン
早期上市によりペット用抗体薬の可能性を切り開いていく。今期までは「拡大期」としてこれまで数多くの共同研究契約を締結してパイププラインの数を増やしてきた。そして契約一時金や研究開発を積み上げ、前期は黒字化、今期は売り上げ拡大を実現する計画。来期からは「発展期」と位置付け、現在探索段階にある研究プロジェクトを進めて導出を実現したい。30年以降は「安定期」。一番進んでいるプロジェクトが30年には上市されるのではないかと期待している。製造販売が開始されると売り上げに応じたロイヤリティなどが入ってくるため安定した収入を得られるとして安定期と名付け、ビジョンを描いている。
1,000億円売り上げても不思議のない領域
今一番売れているのは皮膚疾患だが、私たちを含めて各社が今一番力を入れているのが慢性腸症。人でいうところのIBD(下痢や軟便、嘔吐が長く続く消化器疾患)のような病態が問題になっている。ほか、関節疾患が多いので神経痛。さきほど申し上げたネコ特有の慢性腎疾患は大きな治療薬ニーズがあり、まだまだ満たされていない領域。現在、世界で最も売れているのはイヌのIL―31を標的としたアレルギー性皮膚炎治療薬で、1品目で1,000億円を売り上げている。私たちが知る限りでもIL-4抗体など各社がいろいろなメカニズムものを開発している。このためすべての製品が1,000億円売り上げるとは申し上げないが、1,000億円売れても不思議がないようなものを研究開発している。飼育頭数、罹患率、治療を受ける比率などを計算すると、非常に大きなマーケットが存在する。われわれの製品がどんどん上市されたとしても、マーケットが小さくてもう入れないということは決してないだろう。(Q)

