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インタビュー2026年11月5日

よくわかる!! モビルス(4370 ・ 東証グロース)~ アナリストが石井社長に聞く10の質問 ~

本テキストは、モビルス石井社長への インタビューの内容 を書き起こしたものです。石井社長には、多くの投資家が抱く「10の質問」にお答えいただきました。

【会社名】モビルス(4370・東証グロース)
【実施日】2026/10/20
【回答者】 代表取締役社長 石井 智宏 氏
【会社概要】

2011年9月設立。企業の問い合わせ窓口であるコンタクトセンター向けに、有人対応やAIを活用したCX(顧客体験)ソリューションを提供する。有人チャット「MOBI AGENT(モビエージェント)」、AIチャットボット「MOBI BOT(モビボット)」、ボイスボット「MOBI VOICE(モビボイス)」、オペレーション支援AI「MooA(ムーア)」などを展開し、トランスコスモスや富士通とのOEM(相手先ブランド製品製造)契約など、パートナー経由の販売網も持つ。2026年8月期の連結売上高は21億18百万円(前期比14.2%増)、連結営業損失は88百万円。2027年8月期は売上高26億35百万円、営業利益32百万円と黒字転換を計画する。2025年4月には、トランスコスモス(9715)との合弁会社「vottia(ボッティア)」を設立。有人対応で培った知見とトランスコスモスの運用力を生かし、AIによる電話応対の自動化を成長領域として開拓する。

Q1
創業から現在の事業構成に至るまでの経緯と、大きな転換点を教えてください。

大きな転換点は、受託開発を中心とする会社から自社製品を持つ会社へ変わったことと、生成AIへの投資を通じて本格的に電話の応対領域へ踏み込んだことです。

当社は2011年に創業し、当初は通信キャリア向けのモバイルアプリの受託開発を、10名に満たない規模で行っていました。

受託開発は、適切に運営すれば安定した収益を得られる一方、事業規模の拡大には限界があります。そこで、2014年に私が参画し、自社で製品を開発、販売する事業モデルへの転換を進めました。外部の投資家にも参画していただき、受託開発の中で作り始めていたチャットサーバーを軸に、事業化を模索しました。

最初はゲーム内のチャット機能や、現在のSlackやTeamsのような社内コミュニケーションツールも検討し、試作品を作りました。ただ、単価や事業の拡張性という面で難しさがありました。その中で、お客様からの相談をきっかけに出会ったのが、コンタクトセンターの領域です。一定の市場規模があり、当時はチャットもほとんど普及していませんでした。LINEもこの領域に積極的に取り組もうとしていたため、連携しながら企業と顧客のコミュニケーションをチャットで支援する事業を始めました。

一方で、受託開発から自社製品の開発へ切り替えるためには、組織の考え方も変える必要がありました。そのため、受託案件の対応が増えても製品開発の人員は動かさないようルールを設け、受託開発と製品開発のチームを徹底的に分流しました。

製品が立ち上がり、売れ始めたのは2016年頃です。機械学習型AIを使うチャットボットが注目され始めた時期でもあり、当社はLINEを通じた企業や自治体と利用者とのコミュニケーションを中心に展開しました。ただ、大企業が中心の業界なので、設立間もない企業が単独で参入するのは容易ではありません。そのため、トランスコスモス(9715)、富士通(6702)などとの提携を通じて成長してきました。

その後、テキストの領域から音声へと広げ、「MOBI VOICE」による電話受付の自動化にも取り組みました。さらに、2022年頃から生成AIが急速に発展し、従来の延長線上にはない変化が起きると考えました。上場直後ではありましたが、2年間の先行投資を行う方針を示し、生成AIを活用した製品開発に取り組みました。

2024年末から2025年にかけて、その成果となるサービスの展開を始めています。以前はテキストが主軸でしたが、生成AIによって、コンタクトセンター市場の8割を占める電話での応対にも本格的に取り組めるようになりました。この音声領域への展開が、もう一つの大きな転換点です。

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【出所】:モビルス 事業計画及び成長可能性に関する事項 p.11 (2025/11/28)

Q2
AIの進化で競争環境が変わる中、どの領域で、どのように成長を目指していますか。また、競争環境についても教えてください。

当社は、有人の電話応対を支援するAI、AIエージェントによる応対の自動化、そしてテキストでの顧客対応という三つの領域で成長を目指しています。それぞれ市場の成熟度や競争環境が異なるため、製品と販売方法を分けて取り組んでいます。

一つ目は、人が電話を受けて回答する業務をAIで支援する領域です。2023~2024年に投資して作り上げた「MooA CommNavi(ムーア コミュナビ)」が、この領域の製品です。2025年頃からPoC(概念実証)が始まり、2026年に市場が成長しており、2027年頃には成長の勢いが最も強くなるのではないかと見ています。

この領域は、製品単体で動くのではなく、既存の電話設備などとの連携が必要です。顧客との関係づくりに加え、SI(システムインテグレーション)の対応も必要になるため、新規参入のハードルは高いと考えています。

二つ目は、AIエージェントが電話での受付や手続きを自動で行う領域です。当社は、トランスコスモスとの合弁会社vottiaで開発する「maestra(マエストラ)」を通じて、この市場を取りにいきます。

現在、応答の時間差や音声の自然さなどが改善したことで、AIとの自然な会話が成立するようになり、各社が製品を投入しています。ただし、自然に会話するデモができることと、実際の業務で安定して使えることは別です。想定外の問い合わせがあると精度や挙動が安定しないなど、まだ課題があります。私自身は、2028年後半から2029年頃に実用性が広く認められ、その後、人が担っている業務のAI化が大きく進むのではないかと考えています。

この市場は現在のBPO(業務受託)事業だけで市場規模が1兆円超と大きい分、競争も激しくなると見ています。ただ、優れたAIエージェントを持っているだけでは勝てません。業務に合わせた調整、導入後の挙動の監視、再調整など、運用面の負荷が大きいからです。AIが対応できない場合に、すぐ人が引き継げる体制も必要です。

その点で、さまざまな業界の業務を実際に運用しているトランスコスモスと組んだことは大きな意味があります。技術だけでなく、現場の業務と運用体制を合わせて提供できることが、当社の強みになると考えています。

三つ目は、創業期から取り組んできたテキストの領域です。電話の自動化に注目が集まっていますが、AIが応対するようになれば、利用者は電話かチャットかという区分より、そのときに便利な手段を選ぶはずです。そのため、テキストでのコミュニケーションは、むしろ増えていくと考えています。

従来のチャットボットには、利用者にも導入企業にも、十分な成果が出ていないという不満がありました。一方で、当社は生成AIを活用することで性能を大きく改善できると考えており、「MOBI BOT GenAI(モビボット ジェンエーアイ)」として製品を刷新し、現在の100億円規模の市場でシェア拡大を狙っています。

さらに、AIで解決できなかった問い合わせを引き継ぐ有人チャットを持っていることも大きな資産です。古くから取り組んできた有人チャットはほとんど当社の独占的な市場になっており、競合の中にはチャットボットを当社の有人チャットに繋げている企業さえあります。このように、自動対応と有人対応を組み合わせ、拡大するこの市場をしっかり取り込んでいきたいと考えています。

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【出所】:モビルス 2026年8月期 決算説明資料 p.19 (2026/10/10)

Q3
テキストでの顧客対応が再び広がるきっかけと、その機会を取り込むための事業構想を教えてください。

利用者が自分の代わりにパーソナルAIへ問い合わせを頼むようになれば、テキストを通じた企業とのやり取りが増えると考えています。その変化を取り込むため、CXの設計から開発、製品提供、導入支援、運用まで、一気通貫で対応できる事業構成を目指しています。

例えば、スマートフォンのAIに「テレビの調子が悪いから確認しておいて」と頼む場面です。問い合わせ先が電話しか受け付けていなければAIも電話を使うでしょうが、基本的にはテキストやシステム間の通信でやり取りするようになると考えています。その場合、実際に操作するのが人ではなくても、テキストでの問い合わせの量は増えていくはずです。

当社はもともと受託開発から始まったため、お客様ごとのカスタマイズにも対応してきました。そこにSaaS製品があり、製品を導入して成果につなげるカスタマーサクセスにも以前から投資しています。

さらに、2025年に設立したvottiaは、AIエージェントを開発する会社であると同時に、私にとってはデジタルの運用を担う会社でもあります。生成AIは導入して終わりではなく、継続して挙動を確認し、性能を引き出す必要があります。業務と技術の両方を理解して運用できる人材を、すべての企業が自社で確保するのは難しいためです。トランスコスモスの運用力に加え、vottiaでも運用を担う組織を作っていきます。

そのうえで、今後3~4年で強化したいのが、上流のコンサルティングです。企業のCXを再設計し、目的やKPIを定め、それを実現するシステム構成を考える、ITコンサルティングに近い領域を想定しています。

また、自社製品への転換後は抑えてきた受託開発も、改めて強化していきたいと考えています。CXというテーマに絞り、上流から現場の運用まで対応できる体制を持つことが、現在考えている事業構成の完成形です。その中で、テキストと音声の最適な使い分けにも対応していきます。

Q4
成長を目指す三つの領域において、他社が参入してきた場合にも優位性を保てる、御社ならではの強みは何でしょうか。

大きな強みは、AIによる自動化だけでなく、人が対応するためのシステムを、現場の業務に合わせて長年作り込んできたことです。さらに、先進的なお客様と一緒に検証と改善を重ねる関係性や開発体制も、短期間ではまねしにくいと考えています。

自動化ツールは、AIを活用した開発の進展もあり、以前より作りやすくなっています。ただ、コンタクトセンターでは、それだけですべてを完結できるわけではありません。AIの挙動を確認する人や、AIが対応できない問い合わせを最後に引き受ける人が必要です。

この人が使う側のシステムは、管理画面や操作性を含め、実際の業務を理解したうえで作らなければなりません。当社は、有人チャットや電話応対の支援機能を継続して作り込んできました。永続的な参入障壁とまでは言いませんが、開発と運用経験の積み重ねという時間軸で差別化できていると考えています。

また、製品開発では、仮説を立てた後の検証や磨き込みを、必ず先進的な企業と一緒に行うことを徹底しています。社名は申し上げられませんが、長く協力いただいている企業が2社ほどあります。新しい取り組みに前向きなお客様と密接に連携できることは、人が使う機能を改善していくうえで欠かせません。

こうした関係性も、それに並走できる開発体制も、一朝一夕には作れません。派手な話ではありませんが、非常に大切にしている強みです。

Q5
販売面では、直販と代理店をどのように使い分け、事業拡大につなげていきますか。

製品ごとに最適な販売経路を作る方針です。電話応対を支援する製品ではSIerとの連携を強め、自動化ツールでは直販も重視します。vottiaは、モビルスとトランスコスモスの販売網を活用して展開していきます。

当社はコンタクトセンター業界に参入した当初、強力なパートナーと一緒に取り組む方針で、ほとんどをパートナー経由の営業から始めました。その後、直販部隊を作り、現在はおおむね半々という状況です。

トランスコスモスに加え、アルティウスリンクやベルシステム24(6183)など、運用を担うBPO企業とも、排他的ではない形で関係を築いてきました。その積み重ねの一つが、トランスコスモスとの合弁会社設立につながっています。

一方、2026年8月期に想定より時間がかかったのは、有人の電話応対を支援する製品の販売経路作りです。これらは既存の電話設備に組み込んで導入するため、SIerが強い領域です。当社は従来、この分野のSIerとの関係が十分ではなく、連携して販売する体制の整備に時間を要しました。製品に応じたパートナーづくりは得意としているものの、この遅れは反省点です。

直販については、引き続き既存のお客様との関係を深めていきます。特にAIエージェントや生成AI型チャットボットなどの自動化ツールでは、直販を重視しています。

ただし、AIエージェントは、どの会社の立場から見るかによって販売経路の見え方が変わります。モビルスとしては直販に取り組みますが、製品とAI運用を提供するvottiaから見ると、モビルスとトランスコスモスが販売を担う形です。vottiaの視点では、強力な販売チャネルを持てていると考えています。

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【出所】:モビルス 事業計画及び成長可能性に関する事項 p.27 (2025/11/28)

Q6
vottiaへの先行投資と収益化を、どのような時間軸で見ていますか。

vottiaは2027年8月期も先行投資を続け、2028年8月期の黒字化を目指します。一方、モビルス単体の利益を伸ばすことで、連結では2027年8月期の黒字化を計画しています。

vottiaでは、2026年8月期に先行投資を行い、2027年8月期も同程度の投資を続ける考えです。ただし、売上が立ち上がってくるため、損益面では赤字幅の縮小を見込んでいます。そのうえで、2028年8月期頃に損益分岐点を超えていくという時間軸です。

モビルス単体については、2025年8月期から通期で黒字となっており、現在は継続的な投資を行いながら利益率を高めていく段階に入っています。モビルスの利益拡大でvottiaの赤字を吸収し、グループ全体として収益化を進めていく考えです。

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【出所】:モビルス 2026年8月期 決算説明資料 p.23 (2026/10/10)

Q7
vottiaの開発費は、今後の収益化に伴って資産計上されるのでしょうか。

モビルスと同じ会計上の考え方で、開発した製品が将来収益を生むかどうかを評価します。その条件を満たし、製品として収益を生む段階に入れば、資産計上が行われると考えています。

赤字か黒字かだけで取り扱いを変えるということではなく、製品の将来収益に基づく評価です。モビルスでも同じ考え方を採用しており、vottiaでも売上がしっかり立つ段階では、ソフトウェア資産が積み上がっていくと考えていただければと思います。

Q8
投資家は、モビルス単体の収益とvottiaへの投資を、どのように評価すればよいでしょうか。

モビルス単体の収益力と、vottiaが将来の大きな市場を取り込むための投資は、分けて見ていただきたいと考えています。一方で、単体が黒字になったからといって、それを維持するだけで十分だとは考えていません。

AIの市場は急速に成長し、変化も激しいため、最も大きな機会がある領域へ投資することは不可欠です。vottiaへの投資もそのために行っています。競争に勝つために、必要な先行投資をしっかり実行する考えです。

ただし、システム開発に資金を投じれば投じるほど勝てる市場だとも考えていません。2026年8月期の投資は約1.3億円という規模感ですが、それを10倍にすれば必ず勝てるというものではありません。

この市場では、システム自体の価値に加え、導入や運用を担う人の付加価値が大きいと考えています。導入も、導入後の保守・改善も容易ではなく、それらが完全に自動化されるのはまだ先になります。AIエージェントを現場で使える状態にするための対応にこそ、人が関わる意味があります。

そのため、vottiaが提供するプラットフォームを、販売と導入を担うモビルス、トランスコスモスが支える形で事業を進めます。投資の負担も、プラットフォーム開発だけでなく、両社の導入・運用体制の整備に及ぶと考えています。

足元の利益率はもちろん重要で、計画を意識して経営しています。そのうえで、人が担う業務がAIへどのように移り、AIでは対応しきれない部分をどのように人が支えるのかという視点から、現在の投資を見ていただければと思います。

Q9
事業の進展を確認するうえで、投資家が注目すべき出来事や指標を教えてください。

注目していただきたいのは、AIエージェントが実際の業務で成果を出した事例と、有人の電話応対を支援する製品の大型案件の受注です。この二つが、投資成果を確認しやすいポイントだと考えています。

AIエージェントについては、期待が先行する段階から、実際に使えることを証明する段階へ進む必要があります。例えば月間1万件の電話に対応する企業で、AIが対応する比率が10%を超え、さらに高まり、人が行うよりも効率的に対応できることが確認されるような事例を作りたいと考えています。

現在は各社が試行していますが、実用性が証明されれば、AIエージェント市場の拡大につながります。人が担っている大きな市場がAIへ移っていくことの、具体的な裏付けになるためです。

もう一つは、有人の電話応対を支援する領域です。この市場は既に成長し、製品の実用性も確認されています。当社は販売面で少し出遅れましたが、大型案件を受注し始めていることに注目いただければと思います。2023~2024年に行った投資の回収が、想定より遅れながらも始まっているかを確認するポイントです。

テキストの領域は、一つの大きな出来事によって急に変わるというより、当社が持つ資産を生かしながら、着実に積み上げていくイメージです。三つの領域それぞれの段階に応じて、成長を見ていただきたいと考えています。

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【出所】:モビルス 「豊通保険パートナーズ、モビルスのオペレーション支援 AI「MooA CommNavi」導入」 (2026/5/12)

Q10
最後に、個人投資家の皆さまへ伝えておきたいことを教えてください。

当社を評価する際には、コンタクトセンターという市場の大きさと、その市場で当社が積み上げてきた製品、信頼、販売網を見ていただきたいと考えています。

コンタクトセンターという言葉は、個人投資家の方にはなじみが薄いかもしれません。しかし、購入した製品の使い方が分からないときや、不具合が起きたときに連絡する窓口は、多くの方が利用したことがあるはずです。当社は、そうした企業と顧客の接点を支えています。

当社が捉える関連市場には、システムの市場と、人が業務を担うBPOの市場があり、合わせて2兆円規模の大きな領域があります。一方で、大企業を中心に慎重な運用が求められる業界でもあり、新しい企業が簡単に参入できるわけではありません。

その中で当社は、製品とブランドを築き、BPO企業やSIerとのパートナーシップを通じて販売経路を確保してきました。今後、AIの活用が進む中でも、こうした積み重ねを生かして成長し、業界のトップを目指す考えです。

競合企業との比較だけでなく、当社がどのような市場に入り、どのような立ち位置を築いているのかまで理解していただければ、事業の可能性をより具体的に感じていただけると思います。

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【出所】:モビルス 2026年8月期 決算説明資料 p.6 (2026/10/10)

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