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インタビュー2020年4月23日

トップインタビュー シルバーライフ 代取締役社長 清水貴久氏 高齢者向け配食「領域」「規模」拡大で成長加速へ

シルバーライフ
代取締役社長 清水貴久氏

シルバーライフ(9262)に注目したい。2017年に東証マザーズへ上場、今年1月27日付けで1部に市場変更。主に高齢者向け配食を手掛ける同社はいくつかのチャレンジに取り組む。代表取締役社長の清水貴久氏に話を聞いた。

――4月から新商品を販売開始した。

「高齢者向け配食サービスを展開する当社。自社または協力工場で食材を仕入れて総菜に加工、全国のFC加盟店がお弁当として盛り付けて個人宅や施設向けに、あるいは総菜のまま施設に配達している。総菜はこれまで冷蔵のみの対応だったが冷凍設備を導入。施設向け冷凍総菜パックの販売を始めた」

――どうして「冷凍」なのか。

「利用者側、とりわけ施設にとっては使い勝手が各段に上がる。当社の総菜は注文を受けてから食材を調達する完全受注制のため、施設に対しては発注から納品まで12日間ほど頂戴している。保存が効く冷凍ならば作り溜めができ、翌日発送が可能になった。施設では日々の利用者数をあらかじめ正確に把握することが難しく期間短縮は大変喜ばれている。そもそも保存が効くので数量を気にせず発注できる点もメリット」

「冷凍食材の市場は大きく伸びるとみている。現在は250億円ほどと、高齢者向け配食市場1,500億円と比べて小さいものの、今後5年間で2倍の500億円まで急拡大するとの調査結果もある」

――冷凍にも競合が存在する。強みは?

「圧倒的な商品力と価格競争力だ。自社工場では現在1日約4万食を製造するが、一般的な食品工場のように限られた総菜を作り続けるのではなく、約1,000品あるメニューから毎日12品ほどピックアップするなどフレキシブルに対応する。それでいて低価格。当社の施設向け冷凍食材パックは1食290円と他社より1割ほど安く、しかし2倍の利益率を実現できている」

「ちなみに当社のメニューは主菜と副菜の2品を基本とするが、施設向け冷凍食材パックについては副菜もう1品を無料で付けることで、お得感がさらに増している状況だ」

――多品種・低価格、なぜ可能なのか?

「全国約750店舗は配食業界ナンバーワンの規模。これに自社工場を組み合わせた垂直統合のビジネスモデルだからこその仕組みだ。例えば、施設向け冷凍食材パックの“おまけ”は主力事業である冷蔵総菜の製造過程で発生した余剰分をストックしておいたもの。冷蔵総菜は300グラム単位で販売するのだが、食材の仕入れや調理の際には発注された量を下回らないよう対応するため必ず余剰が発生する。これまで製造量の約8%を占めていた余剰総菜を冷凍品として活用することで、当社は廃棄手数料が消滅、無料で受け取る利用施設からは喜ばれる新しいサービスが誕生した」

――業績について。2Qは減益だった。

「2020年7月期の第2四半期は売上高が前年同期比11.1%増の42億1,200万円だったのに対し、営業利益は同5%減の4億1,100万円。期初計画では13%増の4億9,000万円を見込んでいた。ただし、これには一時的要因が含まれること、それ以外については想定を上回る堅調ぶりを確認していることから、通期予想に掲げる売上高88億3,000万円(前期比13%増)、営業利益9億9,000万円(同11.8%増)については据え置いている」

――「一時的要因」について詳しく。

「売り上げの約15%を占める施設向け冷蔵総菜販売において、最大の顧客が期初に購入量を減らしてきた。最大80%ほどあった当社への依存度引き下げが理由とのこと。実は数年前からこの危険性は想定しており、代替策として準備していたのが冷凍サービスだった」

「冷凍サービスを本格稼働させるべく急遽、先述した施設向け冷凍総菜パックを立ち上げたほか、先行して昨年4月からは個人向けに冷凍弁当の販売をインターネット上で開始していた。広告費先行で2Qまでは赤字が続いたが、昨年12月には単月黒字化を達成。3Qから利益貢献するものとみている」

――主力のFC加盟店向けはどうか。

「売り上げの約70%を占めるFC加盟店向け販売は前年同期比12%増と好調だった。約4%の値下げを行ったものの、食数ベースでは16%程度のプラスに。店舗数は年間50~60程度のペースで増加中。そして75歳以上の高齢者人口が急拡大する2025年から30年には店舗数1,500をイメージしている」

――新型コロナウイルスの影響はあるか。

「もともと外出が困難な方などが利用されるサービスなので自粛要請の影響は受けない。しかし混乱発生の当初は個人向け冷凍弁当の販売が一時的に伸びたこと、外国人が帰国してしまい工場スタッフが確保しづらいといった影響を感じたものの、後者については代わりに日本人の応募が増えていることから、結果的には数字にインパクトする材料はないものとみている」

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