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インタビュー2021年4月2日

トップインタビュー 廣田証券 廣田文孝社長 個人投資家と株式相場をつなぐ対面営業

社内活性化へ“ワクワクチャレンジ”

「個人投資家の復権」が叫ばれて久しい。米国では個人の集団がヘッジファンドに一泡吹かせて大きな話題を呼んだ。東京市場でも静かな胎動を感じさせている。1918年創業時から100年以上一貫して株式相場と向き合ってきたのが老舗の廣田証券。間もなく就任3年目を迎える廣田文孝社長(写真)に話を聞いた。

――通常の日本株対面営業のほか、単元未満株取引や同業者の取り次ぎ、そして自己売買を事業の4本柱とされているとか。

「あくまでも、中心を成すのは対面営業です」

――1980年代バブルの崩壊後、長い“冬の時代”を経てきたが。

「お客様のメインは60~70歳代のベテラン揃い。厳しい時代も含め長くお付き合い頂いています。個人投資家は『全部自分で調べて自分で決める』方ばかりではない。“セカンドオピニオン”として営業マンの意見を聞きたい方や、売買の際に背中を押して欲しい(あるいは止めて欲しい)という方もたくさんいる」

――そうした方々のニーズに応える営業マンは凄腕のベテラン揃いか。

「70代の歩合外務員もいるが、平均年齢は40代前半で、むしろ経験豊富なお客様から教わることも少なくない。当社の顧客ビジョンは『お客様の人生をより豊かに』。儲かる時もあれば損をする時もある相場の世界で、変わらず当社とお取り引き頂いているということは、信頼を得ているのではないか」

――昨春来の急反騰相場はどうだったのか。

「うまく相場に乗れていない方が多い。やはり警戒感が強く、『下がったところで買いたい』と思いつつも、なかなかそうした場面が訪れなかったのが現状だ。いったん相応の調整を挟んだ方が入りやすいと思うのだが…」

――近く米国株の取扱いもスタートするとか。

「5月開始予定です」

――長期上昇の米国株には要望も多かったか。

「それもあるが、若い社員にとってはGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などの方が日本株より身近で、実感をもってお勧めできるのではないか。もちろん、『いくら売れ』式の、お客様のためにならないことはしない」

――ノルマはない?

「強いて言えば赤字にならない程度に(笑)。もともとガツガツしない社風なので」

――自己売買部門の状況は。ミリ秒レベルの自動売買相手では、反射神経勝負には敵わないのでは。

「日計りではなく、一定期間ポジションを持って対応する。現物株ディーラーは2人だけ。10人はデリバティブ取引が対象だ。新卒入社時からディーラーとして育てるのが特徴で、以前は応募を理系学生に限定していた」

――それでも勝ち続けるのは大変なことだ。

「もちろん負けることもある。大きく稼ぐよりコツコツ積み上げて、できれば損失は出さないように。その辺が社是(誠実、親切、堅実)通り当社の堅実なところで…」

――社長就任から間もなく丸2年。文字通り大変な時期の船出で、主に取り組んできたことは。

「自由な発想で働ける場を創る『金融×チャレンジ=ワクワク』をミッションとし、ワクワクチャレンジ制度を作った。全社員の提案を直で受け付け、優秀なものには金一封出すとともにプロジェクト化する。専門家連携制度、単元未満株事業や女性社員のカジュアルデーなどが対象となった」

――今どきは制服廃止が主流ではないのか。

「実は先代社長の父も廃止に動いたことがあったが、むしろ制服賛成派が多かった。今聞くと、子育てなどで私服の汚れを気にするというもっともな意見もあった。現在は制服と私服を自由に選択できるようになり、社員主導で『最後の』リニューアルを行うことになった。現場から上がる意見を尊重し、まず社員がワクワクすることで、お客様にもワクワクしてもらいたい」

――最後に、何か個人向けのメッセージなどがあれば聞きたい。

「会社説明会で大学生に話していることだが、就職にも『銘柄選び』の観点が求められる。投資家であるなしに関わらず、財務諸表を調べるなど企業分析の知識が不可欠だ。街中で株式投資の話が普通に交わされるような世の中になってもらいたい」