ハルメクホールディングス(7119)が3月23日、東証グロースに新規上場した。シニア女性をターゲットとした出版、通信販売事業などを展開。公開価格を15%上回る1,981円で初値を付け、その後ストップ高まで買い進まれた。上場当日の記者会見で宮澤孝夫代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

市場ポテンシャルが大きいブルーオーシャン……世の中には様々なシニア女性向けの商品やサービスがあるが、必ずしも彼女たちのニーズを満たしていない。ここに私どもの事業機会がある。例えば「自分のことを年寄りだと思っていないのに、世の中のシニアサービスや商品は年寄りばかりだ」「おしゃれもしたい、素敵になりたいが、勇気が出ない、やり方がわからない」など。こうしたギャップを情報コンテンツ、物販、コミュニティーの3つの事業で埋めている。女性人口の5割は50歳以上と、シニア女性市場は巨大で開拓余地の大きい非常に魅力的な市場。この中でも当社はプレシニア、アクティブシニアといった年代が若く健康状態のいい方々をターゲットとしている。ここは成功している企業が少なく、強力な競合相手はあまりいない。

先入観の排除が成長の転換に……シニア女性向けの事業を行う上で重要なことは、先入観を持たないことだ。かつて私ども自身も「シニア女性は時間やゆとりがある」「おしゃれをしない」などの思い込み、先入観で事業を行っていたがために、数年間業績が低迷した時期があった。しかし実際にはスケジュール帳にはかなり忙しく毎日のように予定が入っており、やり方がわからないだけでおしゃれへの興味もある。こうしたシニア女性のリアルな姿を理解することが非常に重要だという気づきがあった。現在はお客さまの声を集める仕組みを社内に作っている。例えばお客さまからのハガキは雑誌関係で月3,000枚、商品で1,000枚寄せられ、これをそれぞれの担当が手分けして全数読むということをやっている。それ以外にも、お客さまセンターへの声やアンケート、座談会の開催、また、コミュニティー事業でいろいろなイベントをやっているが、極力社員が参加し、お客さまと実際に接することで肌感覚で理解できるようにするというようなことをしている。

ファンを育成する仕組み……ロイヤルティーの高い顧客ベースも強み。単なる物を買っているユーザーというよりは、ハルメクを信頼してくださるファンが多数存在する。ファンを育成するため、集客、育成、単価という顧客育成のプロセスを3段階で分けていて、それぞれ情報コンテンツ、物販、コミュニティーの事業が役割を持っている。3つの事業が連携することで相乗効果を生み出している。

デジタルシフトに対応……月刊定期購読誌「ハルメク」は、過去5年間、年率26%で部数を増やしてきている。女性誌では過去4年間ナンバーワン、全雑誌で見ても、昨年の上期(1~6月)において日本で売られている全ての雑誌の中でナンバーワンになることができた。他の女性誌がかなり部数を減らしている中で、非常に特異な存在だ。一方、インターネットを中心に情報を集める方が増えていく中で、「ハルメク365」という有料のサブスクリプションサービスを昨年8月から提供している。これを大きく伸ばしていくことで成長していく。

B2Bビジネスを強化……物販は、新しい取り組みとして他社ブランド、特にシニア女性の支持の強いブランドなどとのコラボレーションによる商品開発や提供を考えている。また、私どもの商品の中でも競争力が非常に高いもの(靴、インナーなど)がいくつかあり、こうした特定商品を一つの独立事業として展開して伸ばしていく。ほかに、モノを売るだけではなくシェアリングサービスで利用するという形で、モノを増やしたくないというシニアのニーズに応えていくことも今後展開したい。現在は新聞広告の掲載など顧客接点の複線化にも取り組んでおり、将来的にはハルメク365でインターネット経由での新規顧客獲得、コロナ禍で一時的に止めていたリアル店舗の出店再開なども進めたい。

サービス領域拡大へ……コミュニティー事業はかなり拡大余地が大きい。今年で言えば大体2万人ぐらいの方々が利用されているが、規模としてはまだ小さい。そこでキーになるのが自己増殖する仕組みであり、お客さまがお客さまを呼んでくださる仕組みを考えて企画している。さらにリアルの場というのはエンゲージメントが高まる効果がある。また、4番目の事業としてサービス分野もスタートしようと考えている。例えばヘルスケアや終活分野など。物販と同様、シニア女性市場に関心の高い優良企業・優良ブランドと協力、コラボレーションし、積極的に私どものお客さまに提供していくことで成長を図っていきたい。(SS)