よくわかる!! 人・夢・技術グループ(9248・東証スタンダード)
~ Ishareアナリストが野本社長に聞く23の質問 ~
【会社名】人・夢・技術グループ(9248・東証スタンダード)
【実施日】2026/07/16
【回答者】代表取締役社長 野本 昌弘 氏
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本テキストは Ishare が実施した人・夢・技術グループの野本昌弘社長へのインタビューの内容を書き起こしたものです。野本社長には、多くの投資家が抱く「23の質問」にお答えいただきました。
【人・夢・技術グループ・会社概要】
橋梁設計に強みを持つ長大と、地盤調査・解析に強い基礎地盤コンサルタンツを中核とする、総合建設コンサルタントグループである。設計・施工分離の原則のもと、社会インフラの調査・設計から維持管理まで、建設工事以外の上下流工程を幅広く担う。土木分野を中心に事業基盤を強化しながら、建築分野や先端技術分野への展開にも段階的に取り組んでいる。例えば、防衛省から受注する公共インフラや空飛ぶクルマ、量子技術といった新領域・事業が挙げられる。経営理念は「人が夢を持って暮らせる社会の創造に技術で貢献する」であり、DXによる生産性向上とグループ7社のシナジー、M&Aを掛け合わせ、防災・減災を含む安全安心な国土づくりと持続的成長を目指している。
Q1
建設コンサルタントは、どのようなバリューチェーンの中で、どのような付加価値を提供しているのでしょうか。また、その中で人・夢・技術グループが特に得意とする分野を教えてください。
建設コンサルタントは、一般には分かりにくい業界であり、建設会社と混同されることもあります。わかりやすく言えば、ゼネコンが工事を担うのに対し、建設コンサルタントは、建設プロセスの上流工程から完成後の維持管理まで、工事そのものを除くすべての工程を担います。企画や設計がなければ工事を進めることはできませんし、完成後のメンテナンスにも私たちの仕事が必要です。
社会インフラの老朽化が進む中、建設コンサルタントの役割は一段と重要になっております。例えば、埼玉県八潮市で発生した下水道管に関する道路陥没事故のような事態を防ぐうえでも、インフラの点検・維持管理は欠かせません。
当グループは、橋梁や構造物に強い株式会社長大と、地盤調査に強い基礎地盤コンサルタンツ株式会社が中核ですが、そこから事業領域を広げ、現在は総合建設コンサルタントと呼べる位置にまで業容を拡大できている考えています。

出所:26/9期2Q決算説明資料
Q2
なぜ、ゼネコンとは別に、建設コンサルタントという業界が生まれたのでしょうか。
建設コンサルタント業界が生まれる以前は、発注者が設計を行い、それに基づいてゼネコンへ工事を発注していました。しかし、発注者だけで設計を担うことが難しくなり、専門の設計者が必要になりました。一方、ゼネコンに設計までまるごと任せるとさまざまな問題が生じ得ます。そこで、1959年に、当時の建設省(現・国土交通省)から「設計・施工分離の原則」という通達がなされ、設計領域を担う建設コンサルタント業界が新たに形成されました。
Q3
これまで、どのような経緯で事業領域を拡大してきたのでしょうか。グループの大きな転機と併せて教えてください。
長大は、本四架橋(瀬戸大橋)の設計を目指して設立された会社です。橋梁設計から出発しましたが、長大橋が毎年数多く建設されるわけではありません。そのため、交通、環境、情報システムへ分野を広げ、さらに建築、まちづくり、河川などへ事業領域を拡大してきました。
基礎地盤コンサルタンツは、地盤調査から始まった会社です。地盤は、公共事業に限らず、建造物を建てる際の事前調査や山の斜面など、民間を含め幅広い領域に関わります。また、調査だけでなく、結果の解析や、その解析を踏まえた設計へと業務を広げてきました。
グループにとって大きな転機は、長大と基礎地盤コンサルタンツが一体となったことです。阪神大震災頃をピークに公共事業費が減少し、建設業界の事業環境が厳しくなっていた時期である2011年に、両社がグループとして一体となり、現在の人・夢・技術グループとなりました。

出所:26/9期2Q決算説明資料
Q4
長大と基礎地盤コンサルタンツがグループとして一体となったことで、どのようなシナジーが生まれましたか。
率直に言えば、統合当初から目に見えて大きなシナジーがあったわけではありません。両社の事業は重複が少なく、別々の領域を手掛けていました。むしろ、互いの仕事を侵食せず、それぞれを伸ばせたことが、長期的な持続的成長につながったのだと思います。
長大が受注した業務の中に地盤調査や地盤解析があれば、基礎地盤コンサルタンツへ依頼することは日常的にあります。しかし、それによってグループ全体の仕事量が大幅に増えたわけではありません。より本質的には、互いが持っていない技術や知見を共有できることが、直接目には見えにくいものの、最も大きなシナジーだったと考えています。

出所:26/9期2Q決算説明資料
Q5
財務面では、両社がグループとして一体となった効果はありましたか。
基礎地盤コンサルタンツがグループに加わった当時、同社の財務状況は非常に厳しいものでした。長大の支援のもとで同社の負債を整理できたという点では、大きなシナジーがあったと思います。
Q6
小泉政権の前後から建設コンサルタント業界は逆風が吹いていたものの、アベノミクス前後からは業界全体として収益が回復してきたと認識しています。その中で、過去10~15年の成長を、どのように評価していますか。
2012年末の政権交代(第二次安倍政権発足)後、設計業務委託等技術者単価が上昇したことに加え、東日本大震災などの災害を背景に、国土強靱化関連の予算が措置されるようになったことが大きかったと考えています。技術者単価は13~14年連続で上がり、公共事業費も補正予算を含めて増えてきました。こうした環境の中、長大や基礎地盤コンサルタンツをはじめ、公共事業を手掛けるグループ各社が成長してきました。
一方で、公共事業だけに依存すると、公共予算が落ち込んだ際に企業業績も同じように悪化します。そのため、民間分野への展開、研究開発、新規事業、グループ拡大など、さまざまな施策に取り組んできました。すべてがうまくいったわけではありませんが、こうした取り組みの相乗効果が成長につながったと考えています。
Q7
これまで取り組んできた新規事業や研究開発について、具体的な事例を教えてください。
大きな取り組みの一つが建築分野です。当社にはもともと建築分野がありませんでしたが、アルコムという建築設計事務所を吸収合併し、新卒・キャリア採用の双方で建築人材を増やしてきました。大学をはじめとする教育施設や病院なども社会インフラであり、建築分野の人材を強化したことで、まちづくり分野の事業も拡大することができました。また、建築分野を持つことで、防衛省の駐屯地に関わるような土木・建設インフラ業務も、多数受注できております。
研究開発では、バイオマスガス発電や、フィリピンにおける地域創生にもつながる小水力発電に取り組んできました。現在は、空飛ぶクルマや量子技術にも取り組んでいます。これらはまだ事業化に至っていませんが、数年以内の事業化と、その後の収益化につながる可能性があると考えています。

出所:人・夢・技術グループ中期経営計画「持続成長プラン2028」
Q8
国土交通省だけでなく、防衛省からも受注を獲得できていますが、どのような点が評価されているのでしょうか。
例えば長大の場合、建築分野の実績を抱えることが強みとなっております。建設コンサルタントはもともと土木が中心で、建築は設計事務所が主に担う領域です。当社は建築分野でも実績を重ねてきたことから、建設設計だけでなく全体のコンサルティングまで提供可能であり、この「コンサルティングと建築設計」の組み合わせが、駐屯地など防衛省管轄の案件への参入につながった背景だと考えています。
建設コンサルタントは業界全体で約4,000社ありますが、建築まで手掛けるのは大手の数社程度だと思います。この希少性が案件獲得に貢献しております。
Q9
建築分野への展開によって防衛省など新たな顧客層を取り込み、事業ポートフォリオと収益の安定性を高めてきた、という理解でよいでしょうか。
はい、その理解で合っています。
Q10
空飛ぶクルマに関する戦略と、現在の進捗を教えてください。
SkyDriveとの資本業務提携を行いましたが、最大の課題は、同社の機体がまだ日本で型式認証を取得していないことです。型式認証がなければ事業化は進みませんので、現在は試行段階です。同社からは2028年頃に型式認証を取得する見通しと聞いており、取得後すぐに事業化できるよう準備しています。
空飛ぶクルマに注目した理由は、地域創生と防災です。人口減少に伴って地域の公共交通が縮小しても、地域に暮らし続ける人の移動手段は必要です。また、災害時には、道路が寸断された際の移動手段や、避難所へのアクセスの確保などに活用できると考えています。型式認証の取得後、自治体と連携しながら取り組みを進めていく考えです。
Q11
量子技術については、どのような活用を考えていますか。
当社グループが得意とする交通分野での活用を考えています。自動運転では、車両がどの方向へ走るかを瞬時に計算する必要があります。量子コンピュータは、複数の計算を並列で処理することに強みがあるため、交通や自動運転で活用できる可能性があります。
将来、数百機、数千機の空飛ぶクルマが飛ぶようになれば、安全に制御するために自動運転が必要になる可能性があります。そのほか、電力の配電網や交通流の最適化など、活用先は広いと考えています。
また、当社は、一般社団法人量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)に参加しています。東芝をはじめとする電機メーカー各社は量子コンピュータそのものの開発や車載に向けた方法を検討する一方で、量子コンピュータをどのような場面で活用するかを考えることは、建設コンサルタントが得意とする領域であり、今後、さまざまな活用方法を考えていきたいと思います。

出所:Q-STAR ホームページ
Q12
人・夢・技術グループは、一言で言えば何を実現する会社なのでしょうか。
最も説明しやすいのは、当社グループの経営理念である「人が夢を持って暮らせる社会の創造に技術で貢献する。」という言葉です。私たちにとって最も重要な資本は技術です。その技術を使い、安全・安心に暮らせる社会と、それを支える国土をつくることが、当グループの役割だと考えています。

出所:26/9期2Q決算説明資料
Q13
競合他社と比較した際の独自性や、御社が特に強みとする技術を具体的に教えてください。
長大は橋梁設計から始まった会社です。一般的な桁橋は他社でも設計できますが、橋が大きくなるほど構造が複雑になり、設計や解析の難度も高まります。こうした大規模で複雑な橋梁に対応できることが、長大の強みです。
基礎地盤コンサルタンツは、地盤調査結果の解析を得意としています。地盤調査の解析結果に基づき、その地盤上に構造物をつくる際に何に注意すべきかまで考える点に強みがあります。
また、設計・解析技術だけではありません。建設コンサルタントが業務成果として作成する資料は、発注者が住民説明に使うこともあるため、一般の方にも理解しやすい資料を作り、分かりやすく説明するプレゼンテーションのノウハウも、当グループの強みだと考えています。
Q14
長年にわたり技術を培う一方で、新しい事業にも挑戦できた背景には、どのような組織風土や人的資本の仕組みがありますか。
正直に言えば、制度やルールを細かく整えることは、当社が得意としてきたわけではありません。ただ、そのような風土が、技術の研鑽や新たな挑戦を促すうえではプラスに働いたのだと思います。
上司が細かく口を出すのではなく、社員がやりたいことに取り組みやすい雰囲気がありました。間違っていれば指導は必要ですが、少し方向がずれていても、そこから新たな知見が生まれればよいという考え方です。新しいことへの挑戦にも、既存技術の深掘りにも取り組みやすい環境だったことが、会社の成長につながったと考えています。
Q15
中長期で、業績を最も押し上げる要素は何でしょうか。
今後、公共事業費が大きく伸びるとは考えていません。政府としても老朽化対策や国土強靱化に向けた投資は必要ですが、防衛費や社会保障費が増える中で、公共事業は限られた予算の中で進めることになります。そのため、決められた市場の中で利益を出すには、従来の仕事の進め方を変える必要があります。
一つは、デジタルトランスフォーメーション(DX)による生産性の向上です。もう一つは、現在のグループ7社でシナジーを生み、受注高と売上高を増やすことです。特に株式会社エフェクトと株式会社ニックスはITに強みがあります。両社の力を活用してDXにより他のグループ会社の生産性を高め、建設コンサルタント会社各社の連携によって受注を増やすことが、今後の大きな鍵になると考えています。

出所:26/9期2Q決算説明資料
Q16
2031年9月期の売上高600億円、従業員数2,600人という売上高30%増、従業員数20%増の目標を踏まえると、従業員数の増加率を上回るペースで売上高を伸ばし、DXによる生産性向上を通じた収益性の改善により実現するといった考え方でよろしいでしょうか。
その通りです。売上高と従業員数が同じペースで伸びるだけでは、生産性は上がりません。その場合、収益性が低下する可能性もあります。従来のやり方が必ずしも正解ではなく、より良い方法があるという意識を全員で持ち、改善を進める必要があります。従業員数の増加率を上回るペースで売上高を伸ばすことが重要です。

出所:26/9期2Q決算説明資料
Q17
M&Aを、外部成長の手段としてどのように活用していきたいと考えていますか。
持続的成長のための1手段として、M&Aは有効で、常に機会を探っております。ただし、相手先の経営方針や金額面など、さまざまな条件が合わなければM&Aを実現することはできません。中期経営計画ではM&A予算を「30億円~」としていますが、主なターゲットとしては、地域の建設コンサルタントにグループへ加わっていただきたいと考えています。
道路の寸断や河川の氾濫などの災害が発生した際、インフラに関して最初に動くのは、私たち建設コンサルタントです。東京や大阪の社員だけで、北海道から沖縄まで全国各地へ直ちに駆けつけることはできません。東北や北陸など各地域にグループ会社があれば、まず現地で対応し、長大や基礎地盤コンサルタンツの各拠点が支援する体制を組めます。
当グループにない分野を持つ会社をグループに迎える選択肢もありますが、特に防災・減災の観点から、地域の建設コンサルタントが加われば、より幅広い展開ができると考えています。

出所:人・夢・技術グループ中期経営計画「持続成長プラン2028」
Q18
地域の建設コンサルタントをグループ化し、ロールアップする上で、どのような事業シナジーが期待できますか。
一つは、防災・減災における災害対応のシナジーです。もう一つは、技術やノウハウの継承です。地域の建設コンサルタントは、各地域に根差して事業を行っています。長大や基礎地盤コンサルタンツのように全国で事業を展開する会社のノウハウを共有できれば、地域の建設コンサルタントの技術力向上につながると考えています。
Q19
M&A以外の再投資では、何を最も重視していますか。
DX投資です。中期経営計画では約10億円を想定しています。AIを使ってどこまで生産性を上げられるかが、利益面で大きな鍵になります。効率化が進めば、人員を今と同じペースで増やさなくても、現在の人員体制で受注高や売上高を増やせると考えています。
現時点では、DX投資よりも人的投資の方が大きく、賃上げや社員への還元は必要です。一方、人口が減る中で人だけに依存する事業運営には限界があります。その不足を補うのがDXです。現在の中期経営計画期間中にそうなるとは考えていませんが、将来的にはDX投資が人的投資を上回る可能性もあると考えています。

出所:26/9期2Q決算説明資料
Q20
株主還元について、中長期的な方針と、現在のルールを採用した背景を教えてください。
2031年9月期までは、1株当たり60円と、配当性向35%を基準に算出した配当額のうち、いずれか高い方を採用する方針です。
2023年9月期から、配当性向の基準を25%から35%へ引き上げました。株価をしっかりと上げ、当社の価値を高める必要があると考えたことが、引き上げの背景にあります。2031年9月期までは、この方針をしっかりと遵守していきたいと考えています。
2031年9月期を最終年度とする長期経営ビジョンを達成した後には、株主還元方針を見直す可能性もあります。目標を達成できていれば、さらに配当水準を引き上げられるパターンもあるでしょう。ただし、まだ具体的なことは決めておりません。

出所:人・夢・技術グループ中期経営計画「持続成長プラン2028」
Q21
機関投資家との面談では、どのような点を見られ、どのような質問を受けることが多いのでしょうか。
初めて面談する投資家には、建設コンサルタント業界や当グループのビジネスモデルから説明することが多いです。面談を重ねて理解が進むと、財務・業績数値や業界動向など、より具体的な質問へと発展していきます。
建設コンサルタント業界は急成長しにくい一方で、安定性が高いという点を説明する機会が多いと感じます。特に最近は、機関投資家が投資リターンに求めるスピード感と、当社の事業成長のスピード感との間に差があると感じています。
Q22
投資家とのコミュニケーションで、特に伝えたいことは何でしょうか。
特に伝えたいのは、インフラの需要と重要性の高まり、そして、それを支える当グループの技術力です。新規事業にも取り組んでいますが、事業の基盤にあるのは、社会インフラを支え、新たなインフラ整備の上流工程を担うことです。どのような技術でインフラを支えているのか、社会インフラと当グループの役割が今後どのように変化していくのかを伝える必要があります。
公共事業は予算が限られているため、1年後に2倍、2年後に3倍となるような急激な成長は難しい業界です。一方で、インフラの老朽化といった課題や災害はなくなりません。急成長ではなくても、着実に伸ばし、株主還元を継続していける業界だと考えており、その点を発信していきたいと思います。
Q23
最後に、特に伝えておきたいことを教えてください。
人口が減少する中、担い手不足はこの業界に限らない大きな課題です。当グループの認知度を高め、私たちの仕事が社会に貢献するものであることを、若い世代や子どもたちに知ってもらいたいと思います。そして、より多くの人にこの業界を目指してもらいたいと考えています。
